瀬織津姫にできるたったひとつのこと。
この神なにも出来ぬといったが、たったひとつだけできることがありました。
生きているのが苦しいなと思うとき、まぶたを伏せてみると、そこには暗闇世界が広がっている。
その世界で息をすることが瀬織津姫にできるたったひとつの清めの方法。
この神、罪を消し去ることも、その人生の現実を変えてあげることもできないけれど、
一生懸命生きる人たちが感じている、耐えかねきる苦しみを少しだけ取り除いてあげることが出来るよ。
誰しもに与えているよ。
苦しいなと思うとき、感情が耐えられないとき、動揺してしまったとき。
いつだっていいんだよ。
「助けてほしい」と思うとき、でも、そばには誰もいないだろうから、あなたはまぶたを伏せて暗闇の世界へ戻ってみるとき、背瀬織津姫が力を貸してくれるよ。
まぶたを伏せた世界にいるときばかりは、あなたは母体のなかにいる目もあかない無垢な心を持った赤子です。
その赤子となって呼吸をしてから、ふたたび目をあけてみると、少しだけ冷静になれているよ。
苦しいなっていう気持ちも腹の底に落ちていくかもしれない。
瀬織津姫は、いつだってあなたたちを暗闇の世界で苦しみを受け取る準備をしているよ。
もしかしたら、これを「瞑想」と呼ぶのかもしれないね。
だけど、私は一生懸命生きているのに報われずに「辛い」と思う心があるときに使ってほしいと思う。
そして、そういう人たちを瀬織津姫は見守っている。
瀬織津姫とは「羊水」の神でした。
なにも出来ない神だけど、実利のなにひとつない神だけれど、
それでもたったひとつだけできることは、
あなたが「今、苦しい」と思う心に暗闇の世界で寄り添い、その心の苦しみを流し清める力を持っているよ。
そんな小さなお姫さまがいるんだよ。知っててね。
目もあかぬままの未熟なままに生まれた神だよ。